父ちゃんです。
ご無沙汰してます。
来年度事業計画の作成に追われ、連日夜中までの残業が続いておりました。
家族と一緒にご飯を食べられない日々。
でも、そんな日々も終わり、また通常モードです。
さて、日大工学部において発明家の藤村靖之氏の特別講義がありました。
題して「非電化の意味論」。
藤村氏は、電気を使わない冷蔵庫や除湿器など、非電化製品を次々に発明している人です。
学生向けの講義ですが、一般にも公開してくれたので、聴いてきました。
白髪でひげをたくわえた優しそうなおじいちゃんといった風貌の藤村氏。
君たち、発明家にならないか、といった呼びかけから講義は始まりました。
「僕は、発明家を30年以上やっているんだけど、発明家の何が良いかって、
困っている人を見るよね、
助けてあげたいと思っても、どうしようもないことがある。
でも、発明家だったら、何とかしてあげられるかもしれない、と思うんだ。
以前、南米に行ったとき、50万人の子どもが水で命を落としている、って聞いた。
どうにかできないか。
これらの子どもたちの家庭は、とても貧しくて、水を買うっていうことはできない。
貧しい人たちが、安全な水を手に入れる方法が必要なんだ。
そこで僕は、インスピレーションが湧いて、ある方法を試してみた。
2リットル入りのペットボトルを用意するんだ。
これに400ccだけ水を入れる。
そして炎天下に置く。
すると、70℃くらいまで温まるんだ。
ペットボトルの中は、空気もいっぱい入っている。
これが膨張しようとするから、中はものすごい圧力になる。
そしたら、これを150回シェイクするんだ。
水で死ぬっていうのは、水の中にいる微生物が原因だ。
微生物は、高い温度と圧力と空気に触れることで99%死ぬ。
これがうまくいってね。
今では、南米でポピュラーな方法となった。
僕は、これで何万人かの子どもたちを救うことができたか、って考えるととても嬉しい。
発明家は、良い仕事だなって。
最近7年間は、非電化ってやつをやっている。
別に電化が悪いっていっている訳じゃない。
電気でもいいし、そうじゃなくてもいい。
どちらが幸せかな。
幸せな方を選ぼうじゃないか。
僕の作った冷蔵庫。
これは、中に水が入っている。
ご存知のように水は対流して、温かい水は上に来る。
冷蔵庫の天板は金属の板で、外側が赤外線を放射しやすいようになっている。
晴れた日の夜は、放射冷却でここから熱が放射されるっていう仕組みだ。
これで、真夏でも10℃くらいに保てる。
僕が非電化を始めたのは、発展途上国の多くで電化製品を使うようになってきたから。
発展途上国の人々がみんな、電化製品を使うようになると、
どう見積もってもエネルギーが足りなくなる。
このままでは地球が保たない。
かといって、途上国の人たちに不便を強いる訳にもいかない。
じゃどうすれば良いか。
電気を使わなくても便利なものを作れば良い。
さっきの冷蔵庫だけど、モンゴルの遊牧民が使えるように現地で手に入りやすい材料で作った。
羊2頭分という価格で、決して高価なものじゃない。
ナイジェリアにも行った。
ここでは、オレンジがいっぱい採れるんだけど、余ったものは腐らせている。
でも冬場になると、オレンジがなくてオレンジジュースを輸入しているんだ。
オレンジジュースは、金持ちしか飲めない。
オレンジを腐らせているのに、こんなバカなことはない。
そこで、オレンジジュースの輸入を禁止する法律を作った。
そうすればジュース産業ができるだろう。
ちょっと俺が行くまで、その法律の施行を待ってくれ、と政府に言った。
そうしたら、待っていてくれた。
政府関係者や民間の人たち大勢いるところで説明を行った。
まず見せたのは、ゴージャスなオートメーションのオレンジジュース工場のビデオ。
オレンジがくるりと一剥きで皮が剥かれ、ジュースになり、大きなジュースの川が流れ、パックに詰められていく。
全て自動化されて無人でやっている。
日本人が見ても、へーっ、てなるようなビデオだ。
アフリカ人たちは、もうびっくり。踊りだしちゃって。
君たちがやりたいのは、これかって訊くと、
そうだ、って言う。
設備に金がかかるぞ、というと、
そんなものは、日本のODAがあるからいいんだ、と。
ちょっと、待ってくれ。
今日は、もう一つオプションを持ってきた。それを見てくれ。
もう一つは、しょぼい絵をスライドで見せた。
オレンジを包丁で2つに切って、絞り器でジュースを絞り、人手により瓶詰めされていく。
これを見たナイジェリア人たちは、もうがっかり。
結局、俺たちはこれかって。
怒り出す人まで出てきてね。
でも、良く考えてくれ。
一つは、ゴージャスな電化オレンジジュース工場。
これには、いろいろ問題がある。
まず、ここで作っているのは濃縮還元ジュース。
産地が遠い日本なんかだと、やむを得ないけど、風味が損なわれておいしくない。
また、容器に紙パックが使われている。
オレンジジュースは、酸だから、そのままじゃ紙が溶ける。
そのため、コーティングしてあるけど、これも長い間には溶けるんだ。
日本人は、賞味期限が切れたジュースは飲まないけれど、君たちは飲むだろう。
それから、これらの工場を造ると環境負荷が大きい。
自動化ラインだから、雇用も生まれない。
採算ベースにのらなければ、最終的には、借金だけが残ることになる。
もう一つの非電化のオレンジジュース工場。
絞ったそのままだから、とてもおいしい。
環境負荷も生じない。
人手で造るから雇用も生まれる。
設備もシンプルだから、小さな工場をあちこちに造れる。
人がいっぱいいるところに造って、歩いて通えるんだ。
お金が殆どかからないから、利益も生み出せる。
これから30分時間をやる。
7つのグループ毎にディスカッションして、どちらを選ぶか決めてほしい。
30分後。
7つのグループ全てが非電化の工場を選んだ。
そして、出来すぎのオチまであるんだけど、全員が泣いたんだ。
つまり、彼らが勇気と希望を取り戻した瞬間であったんだ。」
この後、藤村さんの話は、野菜貯蔵庫の話や著書の紹介などに続きました。
講義のあと、学生から質問。
「これからも、世界を変えられるかもしれない、と思って活動を続けるのか?」
藤村さんは、
「僕たちは、団塊の世代の一つ前の世代。
僕らの世代は、学生運動やら何やらで旗持っていろいろやっていたんだけど、挫折した経験がある。
この世代は、絶望して口をつぐんでしまった。
でも、僕はこんなことをやっているおかげで、若者たちに多く接している。
百万人のキャンドルナイトなんていうものを立ち上げた連中も見てきて、それに五百万人くらい参加したらしい。
これは、ひょっとして変えられるのかもしれない。
僕は、女性や若者たちに勇気づけられた。
ただ、彼らには知恵が足りない。
それを、僕が補ってあげられるかもしれない。
僕は、彼らと一緒に活動を続けるつもりだ。」
会場からは、満場の拍手を持って特別講義は終了しました。
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