2022年8月13日 (土)

同士少女よ、敵を撃て

同士少女よ、敵を撃て
逢坂冬馬/著
早川書房/2021

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。
急襲したドイツ軍によって、母親ほか村人たちが惨殺されたのだ。
自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。
「戦いたいか、死にたいか」そう問われたセラフィマは、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。

ソ連では多くの女性兵士たちが活躍した。
物語自体はフィクションだが、史実に基づく設定になっている。
狙撃兵になった少女が、何を喪い何を得ていくのか。
そして真の敵とは?

戦争の不条理さを描く本作。
折しもロシアとウクライナが戦争を行っている。
人生を翻弄されられた人々が大勢いる。
セラフィマたちが身近に感じられるようになると、双方の戦う人々を思いつらくなってくる。
一刻も早く平穏が戻ることを祈る。

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プーチンの野望

プーチンの野望
佐藤優/著
潮新書/2022

世界を驚かせたロシアによるウクライナ侵攻。
一体、プーチン大統領は何を考えているのか。

ソ連・ロシアを長年見続けてきた著者による分析。
プーチンの内在する論理とは何か?
ロシアはウクライナ東南部を支配下におき、ウクライナの非軍事化を目論んでいる。
しかし、ウクライナには到底受け入れられない要求だ。
どちらも戦争をやめられない。
ではどうしたらよいのか?
著者の結論は次のとおり。

戦争をやめさせるには、どこまでいっても対話しかない。

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物語 ウクライナの歴史

物語 ウクライナの歴史
黒川祐次/著
中公新書/2002

1991年、ウクライナが独立宣言を行い、ソ連邦が消滅した。
ヨーロッパに突然大国が出現した。

ロシアによるウクライナ侵攻。
21世紀にこんなことがあっても良いのかという驚きとともに、ウクライナについて何も知らないなと思い、本書を手にした。

肥沃な大地を有するウクライナは、一時的な独立はあるものの常にロシアやポーランドなどの周辺諸国の支配を受けていた。
それでも独自の文化を失わず、各界に多くの人材を輩出し、不屈の精神をもって独立を果たしたウクライナ。

苦難の歴史を経て独立したウクライナがその国土を維持できることを祈る。

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両手にトカレフ

両手にトカレフ
ブレイディみかこ/著
ポプラ社/2022

「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」のブレイディみかこによる初の小説。
「ぼくイエ」では、描けなかった女の子たちが主人公ミアに投影されている。
ドラッグに溺れるシングルマザーの貧困家庭で生活する女子中学生ミア。幼い弟を育てるヤングケアラーでもある。
いろんな問題がうずまく中で生活し、周りに心を閉ざしているミアだが、ふとしたことで金子文子の自伝を手にする。
過酷な境遇に育つ異国の100年前の少女の姿に自分を重ね合わせる。
中学生の同級生たちや集合住宅の隣人たち、ソーシャルたちの関わりの中で事態が大きく動いていく。

ミアとフミコ、懸命に生きる二人の少女がたまらなく愛おしい。

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2022年8月12日 (金)

余白の春

余白の春 -金子文子
瀬戸内寂聴/著
岩波現代文庫/2019
(オリジナルは1975)

ブレイディみかこの「両手にトカレフ」で興味を持った金子文子。
瀬戸内寂聴さんがかつて執筆した金子文子の伝記小説を読みました。

関東大震災後の混乱の最中、捉えられた金子文子とパートナーの朴烈は、皇太子殺害を企てたとして大逆予備罪に問われ、死刑判決を受けます。
無籍者、虐待、貧困と過酷な境遇の中、自らの生を全力で生きた文子は、獄中で自殺します。
わずか23年の生涯でした。
寂聴(当時は晴美)さんはその生涯を実地の取材と資料を織り交ぜて描いていきます。

あまりにも過酷な環境の中、それでも負けずに生き抜いた文子の生き様に圧倒される。
社会とは? 家族とは? 国家とは?
いろんな問いを突きつけられる。
それにしても、これを当時のベストセラーにしてしまう寂聴さんはすごいなあ。
読者の知的レベルもね。

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2021年9月14日 (火)

三体

三体

劉慈欣/

早川書房/2019


ヒューゴー賞受賞で話題の中国の本格SF

異星人の侵略ものだけど、滅法面白い。

物語は、文革の中国、物理学者が処刑されるところから始める。

よく書けたなあ。

異星人に協力する勢力と対抗する勢力。

ゲーム「三体」。

主人公たちが、徐々に追い詰められていく中で、意外なラスト。

最近のSFが狭いところに入り込んでいるのを払拭するスケールとエンタメ性。

いやあ、大傑作!

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2021年1月10日 (日)

JR上野駅公園口

JR上野駅公園口

柳美里/著
河出書房新社/2014

全米図書賞受賞作品。

読了したけど、消化しきれずにいる。

主人公は南相馬出身のホームレス。
彼はずっと出稼ぎで東京に出てきていて、
殆ど家族と一緒の時間もないまま息子と妻に先立たれ、
孫娘と一緒に暮らすも、
孫娘に世話になるのが苦になって再び東京に出てきて、
ホームレスになった。
上野公園のホームレスたちは、
たびたび「山狩り」と呼ばれる特別清掃のために
居住空間を追われる。
そして、3.11。

ホームレスたちの知られざる日々。
南相馬の表に出ない過去。
著者は、居場所がない人たちの思いを丹念に汲み取って綴っている。

もう何度か読まないと。

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2020年10月10日 (土)

ホモ・デウス

ホモ・デウス(上・下)
テクノロジーとサピエンスの未来

ユヴァル・ノア・ハラリ/著
柴田裕之/訳
河出書房新社/2018

人類の未来について考察した本。
ホモデウスもデータ至上主義も嫌だなぁ。
でも、現状はそっちに向かっているように見える。
非効率でも人間至上主義の世界で死にたい。

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非常時のことば 震災の後で

非常時のことば 震災の後で

高橋源一郎/著
朝日新聞出版/2012

著者が雑誌で連載していた文章教室を取りまとめた本。
「あの日」以降、明らかに文章が変わったと言う。
何が変わったのか?
みんな、心の内に死者を抱えるようになった。
そんな時に相手に届くことばは、大きな声でなく、小さな声。

「あの日」から9年経った。
復興のスピードは様々。
大きな声にのまれがちになるけど、小さな声に耳を傾けることを忘れずにいきたい。

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弱さの思想 たそがれを抱きしめる

弱さの思想 たそがれを抱きしめる

高橋源一郎+辻信一/著
大月書店/2014

雑の思想より、前に刊行された本。
人類は、強さを求めて発展してきたけど、その過程で多くを切り捨ててきた。
障がい者、女子供、高齢者、過疎地、引きこもりetc...
でも、ちょっと弱さに寄り添ってみると、そこには実に豊かな世界が広がっている。
強さを求める世界が制度疲労を起こしている現在、弱さを見つめ直すのは如何?

 

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